昔々、ハンガリーの大平原“プスタ”で暮らす動物たちが、新たな季節の到来を祝おうと、賑やかにお祭りをしていました。
そこには大きな角をもった牛、長い毛をもった羊、牧夫に飼われていた馬、そして、まだ毛のコートをまとわずにいた、おなかをすかせたマンガリッツァ豚が集まっていました。
楽しく踊りながら、みんなは納屋にある食べ物を食べたり、井戸から湧き出る水を飲んだりしましたが、マンガリッツァ豚だけは、みんなと一緒に食べる気になれませんでした。
「納屋の食べ物ですって!?とんでもない!新鮮なもの以外、食べられるもんですか!」
そうして納屋から抜け出したマンガリッツァ豚が必死で探し始めたのは、カボチャ、テンサイ、そして樫の木から落ちたドングリでした。マンガリッツァ豚はひたすら食べ続けました。カボチャはとても美味しく、また、それらの木の実はじつに新鮮で、どれも納屋の食べ物よりはるかに魅力的で美味しかったのです。
おなかが大きくふくれるまで食べ続けたマンガリッツァ豚は、ふと気づきました。
「どうしよう!こんなに太った姿を見たられたら、きっとみんなの笑いものになってしまう!」
何とか太ったおなかを隠せるものはないかと、マンガリッツァ豚は探し歩きました。
たどり着いたのは、牧夫の家。そこには彼の奥さんの洋服ダンスがあり、中を覗くと色違いの毛皮のコートが4枚かけてありました。
マンガリッツァ豚は、自分の太ったおなかをぼうっと眺め、どうしてもそのおなかを隠したいという思いがおさえられず、そのコートをちょっと借りることにしました。
その後、マンガリッツァ豚はダイエットも試みましたが、効き目はなく、そのコートを手放せなくなりました。
それからというものの、コートを脱いだマンガリッツァ豚の姿を見た人は誰もいないということです。